栗山元外務次官─正直で率直、戦後の日本外交を背負ってきた方
元外務次官、駐米大使を務められた栗山尚一(くりやま・たかかず)さんが突然お亡くなりになられました。大変立派な外交官で、かねてから尊敬していた方ですので、非常に残念に思います。
栗山さんは、例えば日中国交正常化の際、あるいは日米の沖縄返還交渉の際に、それぞれ第一線で活躍された方ですが、私も何度かお会いして、特に外務大臣の時にお話をさせていただきました。
非常に頭がクリアな方で、しかも大局を見る、そういう意味で日本の戦後の外交を間違いなく背負ってきた、典型的な方だと思います。
私は外務大臣として、日米の密約の解明に取り組んだのですが、その過程で日米の密約のうちの1つ、つまり岸総理の時代に、日本の在日米軍基地から直接出撃行動を米軍がとる場合に、事前に日本政府に協議するという合意がなされたのですが、朝鮮半島有事の際は、事前協議なしで米軍は直接出撃できる、例えば日本の米軍の飛行場から直接爆撃機が飛んで行って、爆撃して帰ってくることができるという密約があったのです。
記録を調べていてわかったことは、栗山さんがこの密約について、これはやはり国民に対して説明できないということで、何とか密約でない形に置き換えようとしたことが明らかになりました。
そういうことも含めて、栗山さんから内々に直接お話を聞いて、この密約に限らず、密約に関わる様々な問題について、特に条約局が長かった栗山さんに様々なお話を聞かせていただいたことを思い出します。
非常にクリアに率直に物事を語っておられましたが、特に密約の調査が完了して、すべての資料が情報公開され、密約についての報告書も出たあとは、守秘義務がなくなったということで、栗山さんは非常に率直に密約について、ご自身の関わり、あるいは意見を述べておられました。
そういうものは、岩波書店の発行するインタビューの記事、書物になって、今、世に出ていますが、密約を何とか置き換えようと、なくそうとご努力されたことも含めて、非常に正直で率直で、そして国のことを、国民のことを考える、立派な外交官だったと改めて思っております。
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