存立事態─武力行使の要件すらはっきりせず、絶対認められぬ法案
先週金曜日に、また安倍総理と60分間、安全保障法制特別委員会で議論しました。議論をすればするほど、疑念は深まるという思いです。
私が主に議論したのは「重要影響事態」、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態、この時には自衛隊が米軍の後方支援を行うということになっています。
現行法は「周辺事態法」、日本周辺地域における日本の平和と安定に重要な影響を及ぼす事態で、念頭にあるのは朝鮮半島有事です。
重要影響事態法は、その「周辺事態」という概念を取り去って、世界中で後方支援をできるようにするというものです。
そして、日米安保条約の効果的な運用に寄与するという法目的もなくなりました。日米安保条約という歯止めがかかっていたのを外してしまった。そして米軍以外も含めて、後方支援できることにしたということです。
その必要性というのは、私には認められない、という観点で議論しました。
そしていつもの、集団的自衛権に関する議論、「存立危機事態」の概念の曖昧さについて議論しました。
前回(6月26日)の特別委員会では、「日本人を運んでいる米国艦船が、攻撃を受けたときに、存立危機事態を認定する」と総理はおっしゃったのですが、それに対して私は、それでは実際には機能しないのではないか、存立危機事態をあらかじめ認定したうえで、自衛隊が防衛出動し、そして危機的な状況に対応するということでないと、存立危機事態の認定が米艦が実際に攻撃を受ける、そこまでということになると、自衛隊はいつ防衛出動するのか、という議論を前回の時に申し上げました。
今回は「米艦が攻撃を受ける明白な危険があれば、防衛出動できる」というのが総理のお答えで、修正されました。しかし、攻撃の着手というのはどうなっているのか、という質問に対しては、明確な答えがありませんでした。
今の個別的自衛権においては、日本が急迫不正の侵害(武力攻撃)を受けたときに「防衛出動」すると、しかし、「武力行使」できるのは相手方に武力攻撃の「着手」があったときと明確に概念を分けています。
今回の法制において、攻撃の着手という概念があるのか、ないのか、ということに対して、あるとしたら、それは日本に対する攻撃の着手なのか、アメリカに対する攻撃の着手なのか、そういう基本的な問いでしたが、明確な答えはありませんでした。
その他、後方支援についても、非戦闘地域という概念を変えるということであれば、その前提として、イラク特措法における、航空自衛隊がバグダットに米兵などを運んだ、そういう仕事をしたのですが、どういう危険な状態だったのか、何を運んだのか、もう10年も経つ昔の話なので、きちんと情報公開せよということを申し上げました。
これに対しても返事はありませんでした。そういう極めて不十分な中で、特に存立危機事態、日本が武力行使をする、その要件がはっきりしないなかで、法律を認めることは絶対にできません。
時の内閣の判断で、戦争を始めてしまう。戦争を始めるということになれば、それによって救われる部分もあるかもしれませんが、反撃を当然食うので、日本国民の命、暮らし、ここに甚大な影響が及ぶ可能性があります。
そういうところについて、しっかりとした議論がまだまだ必要だと思います。
これだけの状態、そして金曜日の夜には、多くの学生が国会議事堂を取り囲んで、法案に対する反対を口々に唱えられました。学者も反対している、法制局長官経験者も憲法違反だと言っています。
そして全国の自治体議員で、数多くの慎重審議を求める決議がなされています。それにもかかわらず、今週、強行採決がささやかれています。
そういうことはあってはならないことです。安全保障法制に対する、国民の幅広い理解がなければ、これを闇雲に進める、特に憲法違反の疑いが非常に強いものを内閣がやってしまうのは、これは立憲国家、法治国家としての破壊になります。
何としてでもこれを止めていかなければならないと思っています。国民の皆さんも是非お声掛けをしていただきますように、よろしくお願いいたします。
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※質疑の詳細はこちら(民主党HP)
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