条件なしの日朝会談─大きな路線転換、場当たり的外交は国益を損なう
安倍総理は7日、「拉致問題を解決するために、あらゆるチャンスを逃さない。私自身が金正恩委員長と条件を付けずに向き合わなければならない」旨の発言をしました。
拉致問題の重要性を考えたとき、1つの考え方であるとは思います。しかし私には、2つの点で大きな疑問が拭えません。
第一に、タイミングの問題です。北朝鮮は4日に日本に向けて「飛翔体」を発射しました。ミサイルだとすると、国連決議に違反するもので、更なる制裁の強化について議論すべき問題です。少なくとも、ミサイルか否か解明をしているなかでの安倍総理の前のめり発言は、経済制裁について北朝鮮に誤ったメッセージを送りかねません。
第二に、より根本的な問題として、何のための条件なし発言なのか、ということです。そもそも安倍総理は、一昨年9月の国連総会で、「対話とは、北朝鮮にとって、我々を欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった」、「何の成算あって、我々は三度、同じ過ちを繰り返そうというのか」、「必要なのは、対話ではない。圧力だ」などと北朝鮮を徹底的に批判し、対話の必要性を全否定しました。私は、金正恩委員長を徹底批判するもので、必要以上に緊張を高めた演説だったと思っています。それが2回の米朝首脳会談があったとはいえ、今度は無条件でも会いたいとの呼びかけです。
菅官房長官は、この点について、「安倍総理は相互不信の殻を破り、次は自分自身が金正恩委員長と直接向き合うとの決意を従来述べていた。そのことをより明確な形で述べたものだ」と説明していますが、「首脳会談を行う以上は拉致問題の解決に資するものにしなければならない」との安倍総理の今までの発言をどう考えているのでしょうか。
そもそも、金正恩委員長にとって、安倍総理が信頼に値するリーダーとして受け取られているのでしょうか。また、国内的にも国際的にも、日本外交の大きな路線転換について、何の説明もなされていないのは異様であり、日本外交の信頼性を失わせかねないものです。
北方領土に続く安倍総理の場当たり的な外交は、国益を大きく損ないかねないものです。与党幹部や政府内で、誰か真剣に安倍総理に再考を促す人はいないのでしょうか。
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