歴史的緊急事態指定―羊頭狗肉にならないように
新型コロナウイルス感染症に関する政府対応について歴史的緊急事態として指定することが決まりました。このことは一歩前進です。ただし、北村担当大臣は「連絡会議」について政策の決定や了解を行う会議ではないとし、詳細な議事録までは必要ないとしていることは、「指定」の意義を失わせかねないもので、発言を訂正させる必要があります。
「連絡会議」は安倍総理や関係閣僚も入って頻繁に開催されています。確かに最終決定は「対策本部」で行われていますが、ここでは議論が行われているというよりは、最終的に決まったことを安倍総理が発表する場であり、実質的な議論が行われているのは「連絡会議」です。安倍総理も「連絡会議」について「対応の現状等について報告を受けたり、今後の方針等について幅広く議論を行う場である」と国会で答弁しています。
そもそも歴史的緊急事態の指定は現在及び将来の国民に対して、政権の意思決定及び経緯について説明責任を果たすために行われるものです。連絡会議の記録がなければ「指定」の意味はほとんどありません。
付言すれば、ガイドライン上は議事録ではなく、議事概要でもよいとしており、詳細な一字一句の議事録まで求められている訳では必ずしもありません。しかし、発言者及び発言内容が記録されていることは求められています。安倍総理はじめ関係閣僚間でどのような議論がなされ最終結論に至ったのか、そのことが国民にわからないようでは、説明責任を果たしたことになりません。
連絡会は当然記録を残すべきです。とても重要なことです。中身のない記録をいくら残しても後世が学べるものはありません。私は国立公文書館の地位をもっと高めることが必要だと思います。業務上に支障が出るという理由で3年間は現課に留め置き、その後移管することになっていますが、そのまま塩漬けになって移管されていないものが多数あるようです。しかし、現在、記録はほとんどすべてデジタル化されています。作成後直ちに移管しても業務上の支障はありません。まあ、すぐというのもなんなので、作成後1年ですべての文書を移管し、国立公文書館がチェックして、不足のあるものは公文書館側が請求できるようにするべきです。公文書の改ざんや隠蔽、不作成には罰則規定も必要です。歴史家の視点を加えれば、何を残さなければならないかが見えてくると思います。そのためにはアーキビストの国家資格を作り、-国立公文書館は資格を出すようですが、研修程度の内容になるのではと心配しています–高度専門家として育成すべきです。韓国のように3つの博士号とはいいませんが、せめて博士課程終了は必要だと思います。そうしなければ、世界相手に太刀打ちできないのです。ドイツ連邦議会は必要な公文書を30分以内に手にすることができます。何年もかかる日本に迅速な施策を打てるはずがないのです。