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米国の拡大抑止―議論すべき重要な課題(その2)

 5月22日の外務委員会でのやりとりの続きです。
 第三に私が取り上げたのは、今後の核を含む軍縮議論のすすめ方です。私は世界において質量ともに圧倒的な核保有国である米露両国が、戦略核や戦術核それぞれで軍縮の具体策を合意した上で、中国はじめ他の核保有国をまき込んで総量を規制するアプローチが必要と考えています。例えば戦略核であれば後述の新START延長を合意した上で、更なる軍縮論議で中国を含めた合意を目指すべきです。外相は私の考え方について「十分理解する」と述べたうえで「アメリカ、ロシア、中国それぞれが持っている兵器は異なり、特定の分野に絞った削減交渉は多分難しい」「より広範な国家、より広範な兵器システムを含む幅広い軍事管理が必要」と答弁しました。米国の最近の主張に沿った考え方です。

 中国は自らの核の正当性を強く主張しています。これは米国に対してのみならず、歴史的にはロシア(当初はソ連)の核に対する抑止という意味もあります。最終的には中国を軍縮の議論にまき込むことが日本にとって重要であることは当然です。しかし、外相の言うように米中露がより広範な兵器システム、即ち核、通常兵器そしてミサイルなどの運搬手段などを包括的に議論することは現実に可能でしょうか。いままでの歴史は圧倒的な核保有国である米露が主導する形で核軍縮交渉が行われてきました。
 今後どのような形で世界及び東アジアにおける核を中心とする軍縮議論が行われるべきか。日本の安全にとって極めて重要な問題であることは言うまでもありません。結局米国の拡大抑止に依存する以上、米国に任せるしかないとの判断が安倍政権にはあるように思われます。その米国が軍縮に消極的であることが議論の停滞を招いているのです。
 中国との軍縮交渉の重要性を強調する外相に、私が日中外相首脳レベルで軍縮議論がなされたことがあるのかと質問しました。なぜかこの時は外相は答弁に立たず、政府委員が「何度も議論しているが詳細はコメントできない」と答弁しました。ここの部分だけ外相が答弁しなかったということは中国側に対し問題提起すらできていない、ほとんど議論がなされていないというのが現実なのではないかと思っています。

 第四に新START(オバマ大統領時に米露で締結した戦略兵器削減条約)に関し、質疑しました。米露両国の戦略核の上限を定めたこの条約の期限は2021年。延長が合意できなければ無効となり戦略核レベルでの軍拡競争が始まります。同条約の延長は極めて重要なことで、安倍総理がトランプ大統領やプーチン大統領に直接働きかけるべきだと私は指摘しました。
 外相答弁は「延長の可能性を含め、今後の米露間の動きを注視していきたい」「さまざまな議論を行っているとお答えさせていただきたい」との形式的答弁に終始しました。
 いままで何度も行われた日米、日露の首脳会談。その場でテーマとして設定し、議論がなされたのであれば記者会見などで多少の言及があるはずです。日本に直接関係ない又は米国の拡大抑止を弱めると考え、いままで首脳会談で議論すらしてこなかったということなのでしょうか。新STARTで定められた1550発という戦略核の上限を更に削減することとなっても、米露間でバランスが取れている限り、そのことが日本に対する拡大抑止を弱めることにはなりません。日本政府の消極姿勢は本当に残念なことです。
 
 新STRATの延長が可能かどうか、実は今年の米国大統領選挙の結果にも左右されます。バイデン大統領となった場合には、米国の核戦略そのものが大きく変わり、新STRATも延長される可能性が高いと思います。ここに期待するしかないのでしょうか。



コメント
  1. みかん より:

    話は違いますが持続化給付金の入札時に他方の金額が黒塗りされていましたが、いつも思うんですが国民の知る権利がないがしろにされてませんか? 黒塗りや海苔弁はダメということにはならないのですか?

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