脱炭素化-より野心的具体策を
菅政権の2050年脱炭素化に向けての具体的な政策が明らかになってきました。温暖化問題に一貫して消極的だった安倍政権の姿勢とは異なり、積極的な取り組み姿勢に変わったことを、基本的には歓迎します。ただし今後議論すべき問題点もあるので、以下に示しておきたいと思います。
まず電力需要が50年に30~50%増えるとしている点。電気自動車導入をはじめ、脱炭素化の中で電化が進展することは当然ですが、一方で省エネルギーの進展が見込まれます。50年においても、原子力が必要というために電力需要を多く見積もっているのではないかとも思われます。50年までにどこまでエネルギー消費構造を変え省エネを徹底できるか、根拠に基づく議論が必要です。
電力に占める再生可能エネルギーの割合が2050年で5~6割としています。しかし2030年の導入目標値は、経済同友会は40%、自民党の議連も45%としています。私も2030年 40~45%は可能と思っています。そこから洋上風力発電や効率の高い太陽電池など、その後加速度的に拡大すると考えれば、「2050年5~6割」はあまりにも過少です。ちなみに、2030年で英60.6%、独65%、スペイン74%です。2050年に英や独の2030年レベルということでは残念です。2050年には、再生可能エネルギー導入面でも、これらの国を超えるだけの目標値とすべきです。
水素や風力、蓄電池の開発を推進すること、競争力強化を図る方向性はよいが、やり方をしっかりと考える必要があります。以前は世界の先頭を走っていた太陽電池や蓄電池が、海外メーカーに追いつかれ、風力発電も国内メーカーはほとんど残っていないのが現状です。なぜ日本の企業がこれらの分野で競争力を失ったのかの検証を行ったうえで、官民の役割分担、開発体制の構築が必要です。
2050年ゼロの前提として2030年の温暖化ガス排出量をどうようにして、どこまで抑制するかの議論が不可欠です。現状の日本政府の目標9.3億トンは2018年の10.6億トンから12年間で1.3億トンしか減らさないものであり、その後2050年までに20年間で9.3億トン減らすというのは、非現実的で考えられません。まずは、2030年までに既存の技術を使いながらどこまで減らせるか。政府は、2050年カーボンニュートラルを経済と環境の好循環につなげるとしていますが、そのためにも2030年の高い目標と、10年間にあらゆる政策手段を総動員して、何をどこまでやるかの野心的な具体策が大切です。
これらの点について、予算委員会などでしっかりと前向きの議論をしていきたいと思います。温暖化問題で政府が積極姿勢に転じたことは遅すぎたとはいえ、本当に良かったと思います。
エネルギーの長期計画は以下2点に集約した議論が必要だと思います。
・石油エネルギーから太陽光(自然)エネルギーへのスイッチングをどの程度のペースで進めるのか。
・原子力エネルギーへの依存度を減らす検討を先進国を中心に本気で取り組む。
ご指摘の通り、グローバルな視点で日本が採るべき方針を議論しなければなりません。
昨今の気候変動の大部分は、地球温暖化によってもたらされていると自分は考えております。