橋本オリ・パラ会長就任―安全安心な大会開催に知恵を
森オリンピック・パラリンピック組織委員会会長が辞任、橋本聖子新会長が就任しました。
森さんの発言は世界が唖然とするもので、日本の国益が大きく損なわれました。その失われた信頼を取り戻すために就任した橋本会長ですが、信じられないことに、「自民党にとどまり、北海道連会長も辞めない」と明言。私は、直後の19日午後の予算委員会で「オリンピック憲章の根本原則に定められた政治的中立に違反する。日本の評価をこれ以上落としたら、オリンピックの開催も危うくなる。事が大きくなる前に、自民党は賢明な判断をすべきだ」と発言しました。その数時間後に、自民党離党を決断したことが伝えられ、ほっとしているところです。しかし、最初からこれでは、大丈夫かと心配になります。自分が負うことになった責任の大きさが、分かっているのでしょうか。ただし、橋本さんの大臣としての答弁をみている限りではしっかりとしていた印象なので、周囲のサポートを受けながら、職責を果たしてもらいたいものです。
橋本新会長の最大の責任は、東京オリンピック・パラリンピック開催をどうするのか、内外に様々な意見がある中で、これを集約し、決定することです。これ以上の延期という選択は、安倍前総理が2年延期をとらず1年延期を決めた以上難しく、やるかやらないかの選択をしなければならないと思います。世界中の選手も当然準備があり、3月中にはやるかやらないかの決断が必要でしょう。開催する場合には、アスリートの安全と、感染拡大防止を大前提に、どのような形で実施するか、綿密に計画しなければなりません。いま、欧米や日本は感染が収束しつつありますが、まだ感染拡大期にある国々もあります。更にこれから半年後のことは予測不可能であり、特にワクチンの効かない変異種出現の可能性もあります。大きなハードルがあり、開催するとしても、かなり制約のある大会とならざるを得ません。
私はこれまで準備のためにつぎ込まれた関係者の努力を無駄にしないため、そして何よりもコロナ禍にある世界中の人々に大きな希望を与えるためにも、大会を開催できればと思っています。分断がすすむ世界を一つにすることが期待されるのです。規模をコンパクトにしたうえで、選手や関係者の健康チェックを完璧に行い、かつ無観客開催を原則とする形で、世界が「これならできる」と思えるだけのプランを早急に提示する必要があると思います。
大切なのは、まず国民に対する説明責任がきちんと果たされること。例えば、追加時に必要とされる費用(税金)はどの程度になるのか、観客を入れた場合と無観客の場合でどうなるのか。その上で1年延期を決めた時のように、総理大臣が理由も明らかでないままバッハIOC会長と決めてしまう、という愚は避けなければなりません。最終的な決定はIOCでなされることになりますが、日本国内においては、組織委員会が政府や都と協議することになるはずです。そのプロセスが国民に見えなければなりません。国会においても特別委員会を設置して、短期間ではあっても、十分に議論するプロセスが必要だと思います。
森前会長の不適切発言はその立場を考慮すれば大きな問題でした。しかしながら、同じ案件で極めて長い時間を費やして、今本当に何が重要なのかを不明瞭にしたメディアの責任はもっと大きいと感じます。
新型コロナ対応やそれに関連した産業・経済の問題以外に重要なことがあるのでしょうか。五輪開催都市の東京にとってはそれも重要でしょうけど、まずは開催か非開催かが最重要であって、ここを何も議論せずに人事の話で盛り上がっていたのは滑稽でなりません。
こういう報道の歪みを利用して政治的な印象操作をしているのが小池都知事です。東京の医療キャパシティが決定的に不足しているのは都政の大失敗です。東京都は医師会の陳情ばかりを受容して肝心な都民生活を破壊していると感じます。メディアはなぜその問題を取り上げないのか不思議でなりません。
話を戻しますと、国民の過半数が開催に反対の意見を持っているとの調査結果を耳にしましたが、個人的には例えば観客やメディアの入国をすべてお断りした上での開催ができないのか、早急かつ真剣な検討を期待しています。