米国産牛肉輸入問題(コメント)
BSE・変異型ヤコブ病という現実の危険が目の前にある
輸入再開にあたっては、政府の格段の真剣な考えが必要
皆さんから多数のご意見をいただきありがとうございます。
いただいたご意見には、責任の所在についてのご指摘や、消費者の視点からのご提案など様々でしたが、輸入再開に際しては、政府は米国産牛肉が安全であることを担保するとともに、国民に対して納得のいく説明をすることが必要です。
ご意見の中には、今回の特定危険部位(脊柱)混入問題について、「日本には全く責任が無い」というものがありました。もちろん一義的には米国に責任がありますが、日本は米国に安全基準を守らせる責任があります。何より、政府は国民に対して食の安全を確保するという責任があります。
しかし、今月公表された米農務省の内部監査報告は、9施設で特定危険部位の除去が適切に行われているか確認できなかったことや、検査の頻度を示す記録もなかったことなどを挙げ、安全基準が守られているとは言えないと指摘しています。
つまり、米国の安全管理がずさんであったにもかかわらず、輸入再開に踏み切ったことは、明らかに拙速な判断であり、政府には重大な責任があります。輸入再開先にありきの甘い認識が、今回の事態を招いた背景にあると言えます。
輸入再開にあたっては、米国のずさんな管理体制を改めることはもちろんですが、食肉の格付けを転用した米国の月齢判定方法も見直す必要があります。
米国では、格付官が肉質などを目で見て確認し、日本向けの輸出条件である20カ月齢以下の牛肉かどうかを判定しいています。この判定方法は、格付官の目視に依存していますが、正確に月齢を判定するには、牛1頭1頭に番号を付け、その牛の出生情報などを記録する個体識別の仕組み、すなわちトレーサビリティー制度が不可欠です。
トレーサビリティー制度は、食に対する消費者の不安を解消するための一つの手段として、既に日本、EU、オーストラリアなどにおいて確立されています。しかし、米国で義務化されるのは2009年となっているため、米政府に対して早急なトレーサビリティー制度の導入を求めることが必要です。
食の安全は生命に関わることです。特にBSEそして変異型ヤコブ病という現実の危険が目の前にある以上、牛肉の安全性確保は政府の大きな責任です。日米関係が重要であること、米国産牛肉の問題は深刻な政治問題でもあることを十分に認識しつつも、米国産牛肉の輸入再開にあたっては、政府の格段の真剣な考えが必要です。
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