シリーズ「2006年を振り返る(3)」――読書
今日は、今年読んだ本について、少しお話をしたいと思います。本は随分たくさん読みましたが、この中で思い出に残った本をいくつか申し上げたいと思います。
まず、今年ケニアに行く前に読んだ本で、『子どもたちのアフリカ』(石弘之著、岩波書店)です。
これは、アフリカにおける、例えば子ども奴隷とか、子どもたちのエイズの問題とか、そういったことについて書かれた本で、この本を読んで私はケニアに行こうと思った、そういう本です。
そして、同じように貧困の問題を扱った本として、ジェフリー・サックスさんの『貧困の終焉』(早川書房)という本があります。
ジェフリー・サックスさんというのは、アメリカを代表する経済学者の1人で、実は私もいまから25年ぐらい前、ハーバード大学で1年間勉強していたときに知り合って、何回か食事をしたり、話をしたりしたことがあります。
当時から彼は、ボリビアの経済の再建に関わっていて、その話を随分聞かされました。しかし、そのときには世界を代表する経済学者、ハーバードで最も早く教授になったと言われる若手の経済学者が、そういう途上国の経済開発に対して関心を持っているということに、ちょっと不思議な感じがしました。
しかし、この『貧困の終焉』という本を読むと、彼がどういう思いで、こういった世界的な貧困の問題、いろんな国の経済的な立て直しの話に自らの人生を賭けようと思ったのかということが本当に伝わる、いい本だと思います。
そして、外交ということでは、船橋洋一さんがお書きになった『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』(朝日新聞社)。
これは朝鮮半島をめぐる各国の交渉の状況が取材に基づいて書かれた、非常に厚い本ですが、中身も厚い素晴らしい本だと思います。
そして、中国がいま抱える問題について書かれた『ワイルドグラス』(イアン・ジョンソン著、NHK出版)。
これを書いたのはカナダ出身のジャーナリストですが、中国における都市開発、法輪功、そして、虐げられた農民の問題、そういったことがかなり深く書かれた本です。
中国の指導者から見れば、非常に頭の痛い中身かもしれませんが、経済発展する中国のもう1つの面を見せたという意味で、非常に感慨深い本でした。
そして、『人口減少時代の社会保障改革』(日本経済新聞社)。
神戸大学教授の小塩隆士さんが書かれた本ですが、社会保障の問題について非常にポイントを突いて書かれた本だと思いました。年金の問題など、私の考え方にかなり共通するところがあって、興味深く読ませていただきました。
最後に、梅田望夫さんの『ウェブ進化論』(ちくま新書)。
この本は、私はあまりITについて詳しくありませんので、最近の状況がきちんと書かれた、私にとって新しい世界を開いてくれた素晴らしい本だったと思います。
そして、この本の中に、1つこういう表現があります。最近の若い世代について、普段アメリカに住む梅田さんが、日本出張中に東京で20代の若者たちに積極的に会って、その結果として、こう書いています。
「それで確信したことは、日本の若い世代には、全く新しい日本人のタイプが生まれつつあるということであった。社会全体で見れば二極分化を起こしているということは否定できないけれど、二極化した上側のスピリッツと潜在能力は、私たちの世代を大きく凌駕していることがよくわかった」
いまの若い世代の考え方を私も少しでも理解したいと思って、今年もいろんな大学での講演活動も、ソウル大学も含めて、6回行いました。
梅田さんが若者に対して、自分たちの世代にない素晴らしいものを持っていると書かれていることに、私も大変勇気づけられました。
来年は是非、若者との対話もさらに進めていきたいし、そして、少しでも時間を作ってさらにいい本を読んでみたい、読みながら考えていきたいと考えています。
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